〜 天使のカード 〜

開くと天使が立ち上がる手作りの素敵なバレンタインカードを見つけた。「わたしたちは母娘でお店をしています」と書かれた説明書付き。絵本作家の彼女、その彼女を選んで生まれてきた娘ナノカちゃん。夏の暑い日に待ち合わせ場所に現れた二人は、彼女が主催するワークショップでそれぞれがデザインしたという素敵なTシャツを着ていた。

本の虫

ワークショップ「リトルアーティスト」では月に一度、三歳以上の子どもと時に大人も混じり二時間アートに取り組む。色の混色や額縁作りなど、アイデアが湧くと母娘でやってみてから企画する。八月に佐世保市立図書館の利用カードに新デザインが追加された。描いた彼女は愛知県生まれで幼い頃から絵本好き。ほどなく「絵本はすぐ終わる、ずっと読んでいたいから」と本へ移行。地元の高校を卒業し東京へ。大学で美術史を学ぶ。高校時代に再会した絵本の世界。特に海外の丁寧に描かれた絵本には特別な想いがあった。就職が決まってゆく友人たちの中で、自分がやりたいことは何なのか、このままやりたいことをしなかったら後悔するのではないかと考えた。絵の勉強をして絵本を出版したいという想いが彼女の背中を押した。

貧乏奨学生

大学卒業後に海を渡り、ボストンの美術学校を経てニューヨークの大学でイラストを学ぶ。ニューヨーク初日、バスに乗ろうとして紙幣を断られた。小銭は足りない。困っているとバスに乗っていた男性が帽子を手に座席を回り「カンパしてやってくれ」と小銭を集めてくれた。お陰でバスに乗れた。感動した。授業料は奨学金をもらっていたが、高い物価の中で貯金を切り崩し、食費を削りながら暮らす一年が過ぎた。このままでは学費が尽きて卒業が難しい。学生ビザが切れたら帰国しなければならない。ゆっくりしていられない。チャンスを掴むにはどうしたらいいか考えた末に路上に絵を並べて売った。誰かの目に留まるかもしれない。たいした収入にはならなかったが、いろんな人を観察し話ができた。

チャンスの神様

ある日、熱心に彼女の絵を見ている人がいた。絵本に興味があるかと問われる。大手出版社の編集者だった。しかし進む打合せの途中で編集者は急に退職し話は消えた。大学は中退した。持ち込みを受け付ける出版社をリストアップして手作りサンプル本を送り、絵本業界の講演会やイベントがあれば出かけ売り込みのチャンスを探した。ある公開講座で編集者に名刺を渡すと名刺の絵を見た編集者がその場で彼女の作品ファイルを開いた。翌日、電話で呼び出され出版したいと言われ期待した。ところが会議でマーケティング担当が首を縦に振らずに企画は通らなかった。アメリカに滞在できるビザの期日が刻々と迫ってきていた。

アメリカンドリーム

彼女が大学を中退した後も恩師は諦めてはいけないと彼女を励まし続けた。世界各国の出版社が参加するイベント前に「チャンスを掴んでおいで」と彼女に関係者パスを渡したのも先生だった。そのイベントで彼女を知っていると言う人に会う。彼女は覚えていなかった。会議で彼女の作品を見たという、現在は別会社の代表だった。後日、指定された出版社に出向く。そこで彼女が持って行ったサンプル本「ダイナ!」と同じ名前の編集長に逢う。一か月後、彼女は二冊の絵本を出版する契約金が書かれた手紙を受け取る。二週間後に日本帰国を控えた、ビザが切れる寸前のタイミングだった。

夢を生きる

ニューヨークで絵本作家のキャリアを積んだ。日本でも絵本やエッセイが出版された。そして東京で出会った男性と結婚し女の子を授かる。それまでの依頼は出産前に前倒しで仕上げていたが、出産二週間後には実家で赤子を抱いてイラストの仕事を再開した。住んでいた横浜は保育園の激戦区、フリーランスには厳しい。娘が一歳の時に佐世保へ移住。一歳半で保育園デビューが叶い集中する時間が確保できた。ある日、五歳になる娘が「どうやったらお金って増えるの?」と聞いてきた。子どもがお金を作る方法とは?お小遣いをもらう、お手伝いしてお金をもらう。それだけ?一緒に作ったり考えたりしながら、お金や社会、ものづくりのことなどを楽しんで勉強していけたらという想いがあった。

NANOKA 1st

母娘で商品を作る「ナノカファースト」が誕生。これがいいかなぁ。ノートにデザインを描き二人で企画会議。天使、お姫様、バレリーナ。左利きのナノカちゃんは「ナノカファースト」では右手で作業する。グリーティングカード、プラスチックの板で作るブローチのファンは多い。気に入ってもらえると嬉しくて商品なのにあげたくなっちゃうナノカちゃん。買い物に行くと高い安いとコメントするようになり計算にも強くなった。パパとママがお金を払ってくれて習い事ができるのも知っている。生きるのにお金が必要。災害募金のニュースにも耳を傾ける六歳は、具体的に稼ぎたい時以外は身が入らないらしい。売り上げで買った小さなぬいぐるみを見せてくれる小さな手、楽しいおしゃべり。母と娘、オトナとコドモのアーティストが生活を共にしながら世界に夢と希望と喜びを発信している。

いろんな感情が沸き上がるのは
誰もが生きる芸術品だから
あなたもわたしも
この惑星に生まれた最高傑作

絵本作家・イラストレーター
にしむら かえ さん
kaenishimura@gmail.com
kaenishimura.blogspot.jp
NANOKA1st(ナノカファースト)
ライター
CHIKA
信州在住・佐世保は第二の故郷 ブライダル・イベント・式典MC、ナレーター、ラジオ放送作家 mc_chika_love_wedding@yahoo.co.jp
女性は世の中の「花」だから。 月刊「はなはな」が創刊当初から伝えたい想いです。 「はなはな人」を読み終えたあなたが一人の女性としてあなたの場所で咲くエネルギーになったらと願っています。