〜 祭壇と畳 〜

事務所の隣、引き戸を開けると正面に大きな白木の祭壇がある。畳も合わせて二十畳はあるだろうか。故人の家族と手づくりで小さくお葬式をする場所だという。家族の一員のつもりで送るという彼女の話に耳を傾けた。

できること探し

自衛官の父と料理上手な母のもと明るく活発に育った彼女は、勉強も運動も大好きだった。地元を離れ京都の大学へ進学、卒業後銀行に就職した。父が他界し、母の体調が思わしくないのを案じて三十歳で佐世保に帰郷。友人の勧めでゴルフをはじめ、わずか三年の間に長崎県の成人女子ゴルフ国体選手に二度選ばれた。ゴルフに限らず、やると決めたら周りからどう思われようが、何があろうがトコトン必死でやり遂げる性格。二人の子どもを連れて離婚するも三人で生きていくと肝が据わった。当時葬儀の現場で働きながら、これからどうやって家計を支えていこうか道を探していた。そんな迷いの中でも息子が中学受験にむけて勉強する姿を見て、私も頑張って自分で仕事をしようと心に誓う。

お役に立てたら

彼女を可愛がってくれる叔母が一人息子を亡くした時、気づいたことがある。叔母は二十年以上前に連れ合いを亡くしている。息子を送った叔母が「書類を書くのが大変」と彼女に弱った声で言う。大きな封筒が目の前にあった。いろんな保険の手続き書類だという。相談窓口はあっても膝を突き合わせて一緒に書類を作ってくれるところは無い。叔母が広げた用紙を二人で確かめながら読んだ。小さな文字を追い二人で指をさし、叔母は名前や文字を書いた。悲しみの中でも冷静に済ませなければならないこともある。「誰かそばにいてくれたら」叔母と同じ不安を抱える人たちは、きっと他にも居るはず。残された人が、その先を安心して生きて、安心して終えられる手助けが自分にできるかもしれないと叔母の横顔を見て思った。

最期に立ち会う

高齢者の相談を聴き、お金の有無に関わらず子どもに迷惑をかけたくないと言う声の多さに驚いた。彼女自身、父の葬儀の後に母親が半ベソをかきながら「なんでこんなにお金を使ってしまったんやろう」という言葉を思い出した。葬儀をあげてくれる身内が居ない方や孤独死が多い現実にも驚いた。ある日、骨まで拾ってもらえないかと依頼を受け孤独死の女性を迎えに行った。硬く冷たいビニールに横たわる裸の体。女の人なのにねと着物をかけた。白い足袋を履かせ「お会いしたこともありませんが、ご縁あって私が弔います」と手を合わせた。後日、市役所の調べで六十年間探していたという故人の妹が現れた。綺麗な顔だったこと、白足袋を履かせお花を入れ、おまんじゅうを持たせたことなどを伝えた。嗚咽しながらのお礼を聞きながら一緒に泣いた。亡くなった場所から火葬場へ直接送る葬儀だけを行う直葬専門のつもりでいたが、その日を境にお線香を上げる場所があってもいいかなと考えるようになった。

小さな葬儀場

なかなか場所が見つからなかったある時、自らが葬儀の仕事に興味があったという女性に出逢う。「私の自宅を改装して使って下さい。あなたがしてくれるなら夢を託したい」と言われ、大家と店子からパートと社長の関係になり今に至る。とにかく毎日が勉強の連続で、ご遺体を搬送している方、お寺様、諸先輩方にいろいろ教えて頂き、お世話になっている。脚を向けて眠れない人たちがたくさんいる。そして、お客様にも学ばせてもらっている。大切な人を亡くしてボロボロの状態の家族に掛ける言葉が見つからないこともある。いろんな想いを抱える姿に寄り添う。「亡くなったお父さんが森田さんに会わせてくれた」お礼の言葉に涙する。

共生共存

亡き人にとっていいこと、家族にとっていいこと、して欲しいことにお応えしたい。本当に良いお見送りが出来たと言ってもらえて初めて意味がある。常に人間力を磨かなければと背筋を伸ばす。参列者が多くなりそうな葬儀は丁寧にお断りして大きな葬儀社を紹介する。できないことより、できることを懸命に。家族だけで送ることを大切に、小さな葬儀に集中する。「お母さんの口紅塗ってあげて」同じ女性として伝える。「まだ生きていらっしゃると思って一緒に過ごしましょうね」その姿の最後の日に家族のつもりで立ち会う。「私のときもココがよか」全てを終えた後に改めて訪ねてこられるお客様に、ありがとうございますと頭を下げる。

あおいくま

「あせらない。おこらない。いばらない。くさらない。まけない(自分に)。」彼女の信条だという。我が心ながら思うようにいかない時もある。それでも自分に出来ることに心を込める。24時間365日、電話が鳴ったら対応する仕事。子どもがいるから頑張っているのに、その我が子に寂しい思いをさせてしまうジレンマ。ぼちぼちでいい、お役に立てればいい。会社設立から三年が過ぎた。高齢社会を心豊かに暮らしたい想いや、生きている間を楽しく暮らしたい願いに寄り添いながら地域に貢献してゆきたいと彼女が微笑んだ。

誰もが、誰かの大切な人
あなたも、わたしも
愛の星に生き去ってゆく

家族葬ホール 愛・セレモニー 代表
森田 由美 さん
佐世保市福石町8-8(Aプライス斜め前)
TEL:0956-20-2233
ライター
CHIKA
信州在住・佐世保は第二の故郷 ブライダル・イベント・式典MC、ナレーター、ラジオ放送作家 mc_chika_love_wedding@yahoo.co.jp
女性は世の中の「花」だから。 月刊「はなはな」が創刊当初から伝えたい想いです。 「はなはな人」を読み終えたあなたが一人の女性としてあなたの場所で咲くエネルギーになったらと願っています。