〜 住宅街の中に 〜

彼女の笑顔に招き入れられ中に入る。いろんな機械と忙しく働く方々の間で社会科見学のようにどんな彫刻ができるのか見せて頂いた。仕事場から自宅スペースへ伺うと壁に素敵な鏡があった。何年か前に彼女がデザインして彫刻したものだという。

あなたの力になりたい

夫とは、十年来の友人だった。「家族になろう」とプロポーズを受けた時、彼女は彼を手伝いたいと思ったという。創業者である両親を亡くし、独りで家業を続けていた彼の力になりたくて結婚を機に前職を辞めた。家庭を優先しつつ梱包などの製造補佐として夫を支え徐々に仕事を覚えた。それまで手掛けていなかったガラスの表面を加工する技術「サンドブラスト」を勉強する為に名古屋へ習いに通った。リビングにある鏡は、次女を出産した後に長女と次女の手形を取り、習った技術で彫刻したもの。可愛い小さな手形を日に何度か眺めるという。

ピンチはチャンス

三年前までは、表示などが書かれた平たい板「銘板」を船の為に作る仕事が主だった。ところが船の生産自体に変化があり受注が減りはじめた。二年後にどうなるか分からない。そこで彼女は学ぶ範囲を広げた。経営の学びを深めて数字を見るようになり、顧客開拓にも乗り出した。銘板が減る分をサンドブラストで補えるようにしようと心に決めて、お客様にデザインの提案を行う。新しい機械を入れられるよう補助金の申請もした。デザインも含めてそのままお客様に提供できるようになればいい。お客様のイメージを形にして現実を作る力になりたい。今できることをする。結婚当初に「一緒にやりたい」と想いを胸に秘めていた彼女が、ついに夫のビジネスパートナーとして走り出した。

主婦は人材の宝庫

経営難のお陰で外に出るようになり学ぶきっかけになったと彼女が明るく笑う。必要な時に必要な人に逢えている。縁に恵まれた。現在の会社は男性二人、女性四人の全六人。主婦には優秀な人材がいる。子どもの体調や学校行事などをフォローできる体制さえ整えば、才能溢れる女性と一緒に働けると目を輝かせる。家庭を持つ自分が働いていて、どれだけ周りの理解を得るのが大事か分かった。家族の理解と本人がやりたいことのバランスが大切。ライフスタイルに合わせた働き方を働く人が選べばいい。バリバリ働いていなくても女性は輝く。彼女が幼稚園の役員をしている時に声をかけ、スタッフになってもらったと聞く。生き生きと仕事する女性たちを眺め、一人少ないことに気づいた。「今日は旦那さんとデートでお休みです」うふふと彼女が答える。なるほど。

一歩でもやれること

出来ることが増えれば提案も増やせる。一人一人やれることを増し、男性も女性にできることは任せて得意分野にエネルギーを注いでもらう。三年前は夫婦二人でやっていた。スタッフのお陰で今がある。「仲良く」そして「楽しく」働くのが基本。一日のうちでまとまった時間を働くことに費やすなら、楽しく働けた方がいい。三年間大変だったけれど、ある時、大変って大きく変わることだと聞いてから納得できた。新しい機械で何が作れるか。記念日や誕生日祝い、スポーツイベントや贈り物に、こんな感じのモノをできないかとの声を聴く度に、自分がすべきことはお客さんが教えてくれると感じる。喜ばれると、やってよかったと心が弾む。この仕事をやっていて良かったと思える瞬間を積み重ねる。楽しく好奇心旺盛に仕事に向かえるのも夫の理解があるから。

背中を見ていて

ホームページからの依頼にはメールや電話で応える。東京や大阪に依頼品を送ることもある。デザインの打合せや納品に外に出ることも多い。会社に居ないということは、娘たちが帰って来る時に迎えられない。学校で配られたプリントを娘が夫に持っていくことが度々あって、がっくりしたこともある。注文が重なる時はリビングテーブルの上も作業スペースになることもある。ある時に娘から売り上げはどう?と尋ねられた。かまってやれない娘へ、ふと売り上げが上がったらアミューズメントパークに行こうと話したからだ。子どもたちが見えるところで仕事しているからこそ、応援してもらえると笑う。

毎日「ありがとう」

小学生の次女とは一か月に一回デートをする。共有する時間が短くても密度を濃くしている。以前は手をかけられないから、子どもたちが可哀そうと思っていた。可哀そうと思ったら子どもが自分は可哀そうな子だと育ってしまう。今は「ごめんね」ではなく日々「ありがとう」と伝えて仕事をして、週末はご飯作をしっかり手をかけて作る。趣味は着物の着付け。自分で着る着物はどんな席にも便利で着ている時間も息抜きになる。いつか自宅で着付けを教えられるようになったらと夢もある。今、ここに居られて良かった。「今までと今から」に正面から向き合って、これからの製造業の可能性を広げてゆく彼女。仲間を見つけて道を切り開く横顔には、優しい微笑みがある。

できないと嘆くより
あなたができることを誇ろう
目覚める朝は毎日
あなたという花が咲く日

みんなが喜ぶものづくり 村上彫刻 専務取締役
村上 敦子 さん
株式会社 村上彫刻
佐世保市日野町924-13
TEL:0956-28-4857
FAX:0956-28-4865

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ライター
CHIKA
信州在住・佐世保は第二の故郷
ブログ「『お花畑で寝転んで』大げさなくらいでちょうどいい実行委員長CHIKA」
https://ameblo.jp/whenyouwishuponastar0603/entrylist.html mc_chika_love_wedding@yahoo.co.jp
女性は世の中の「花」だから。
月刊「はなはな」が創刊当初から伝えたい想いです。
「はなはな人」を読み終えたあなたが一人の女性としてあなたの場所で咲くエネルギーになったらと願っています。