〜 ガラスのテーブル 〜

仕事場でもあるリビングのテーブルで切り分けたケーキにフルーツやお花を盛り付ける彼女の細い指先。どうぞと促される明るい声と笑顔。口に入れると広がる幸せを味わう。

魚の三枚おろし

佐世保生まれ、両親と姉、祖母と暮らす五人家族。釣り好きの父が海から帰ると、母は決まって家にある井戸の横で魚を捌いた。その母の姿を幼い頃からずっと眺めていた。小学三年生の時「私もやりたい」と母に告げた。いつも注意深く見て覚えていた彼女が、身体を使って表現しはじめた最初の出来事。母から許可をもらうと「教えなくていいから」と魚に向かい三枚におろした。褒められた。以降、興味の全ては料理に注がれ台所で母の動作全てを見て育つ。火加減、水を入れるタイミング、醤油瓶をどのくらい傾けたか。料理のことに関しては注意を受けたことが無く、材料も本も彼女が望む料理のことは母が叶えてくれた。絵を描き、本を読み、外で遊んだ。料理の本からノートに書き写すのも楽しんでいた。

レシピノート

小1からバスケットボールをはじめ中学では陸上と掛け持ち。主将を務めるバスケの部活が終わると陸上の練習へ。お弁当は手作り。「おいしい!むっち、また何か作って」昔から褒められると伸びるタイプ。友人の分もお弁当やスイーツを作る。中学生で既にオリジナルレシピを開発、レシピノートに書き溜めていた。絵やレシピの他に食べた人の感想、反省や改善点なども細かく書き込んだ。「むっちレシピちょうだい」と友人に求められると書き写して渡していたというノートを見せてもらった。全て手書き、インターネットで調べることも無く、考えて試して修正して生み出した情熱が、彼女の丁寧な字と共にページにぎっしり詰まっている。お菓子のレシピの基本は、今もこのノートの頃と同じ。

母なる存在

母の料理を当たり前のように食べていた父の姿。彼女にとって大好きな料理は、日常のこと。職業にするつもりは無く、結婚して母と同じように主婦になるだろうと思っていた。人と話すのが好きな彼女は高校卒業後に接客業に就き、ウエイトレスで職場に入ると調理を任されることもあったという。結婚して二人の子に恵まれ、家族と食べるご飯作りが楽しい毎日は、揺るぎない母親を想う日々になった。幼い頃から外食の記憶は無く母の料理を食べて育った。一歩下がって控えめに家事をこなす、母は家族を支える鏡のような女性。子どもの頃は、料理を作ってお母さんに褒められたかった。「母」になってみて料理以外の家事は、さほど好きでないと気づいた自分。料理以外は三日坊主と笑う。

料理教室

五年程前ふとはじめたSNSに載せた料理写真。友人たちから教室をして欲しいと声が上がり、試しに料理教室をするとしたら来たいですか?と書くと百件程の反応が付いた。初の教室は男女二十名。以降、仕事をしながら月一回の教室を開催。夫から「ここで教室したら」と提案がありテレビやソファーを別の部屋に移して二年。現在は別の場所でも行う教室は全部で週に五日。スーパーや市場で手に入る旬の食材を使い、手早く作れて、体に優しく、美味しい料理。生徒さんたちが家族に褒められて調子に乗るほど嬉しい。手作り菓子!おいしい!衝撃!と子どもが騒いでいるという報告を受ける幸せ。お母さんが喜び家族も喜ぶ。涙が出る。教室をやって来てよかった。料理が出来ないんじゃない、いつの間にかマイナスが増えただけ。次世代に家庭料理を伝えたい。出汁取り基本、省けることは省き洗い物は少なく、美味しいものを作る。苦手だという料理を楽しいから得意へと導く。

食は命

毎日夕ご飯を作るのが一番好きという彼女。何を作ろうかとワクワクしながら買い物をする。妊娠中つわりがあっても体調を崩したことが無い。魚屋さんに今日はコレが綺麗ですよと声をかけられるとつい買ってしまう。肉魚の要素を入れ、汁物小鉢と夕食は六〜七品。作りたいものを作って自然にバランスが取れている。出来上がるまで何が並ぶか分からない。あら?こんなに品数できちゃったと笑うことも度々。毎回作るのも写真を撮るのも、写真を見てもらうのも楽しい。ジャンクフードやコンビニスイーツも興味があれば食べたらいい。制限は何も無い。食べることは我慢できないから、元気にしっかり食べて、食べ過ぎたら調整したらいい。歯磨きは地味に爪先立ちをして身体を整えているという。

おうちごはん

家族にとって彼女の料理は日常。息子の身体づくりに料理で協力し、娘に三枚おろしを教えて親子クッキングで全国大会に出場。お風呂上りにケーキが食べたいから作ってと風呂場に向かう息子の言葉に十八分で生地作り生クリームを泡立てる。意地でも買いに行かない。「さすが」とケーキを頬張る息子に「当たり前やん、誰と思っとる」とポーズを決める。新聞等の印刷媒体にレシピをと頼まれて目分量を数字にするのは今でも難しい。母が量っているのを見たことが無い。感覚ありきの家庭料理は、教わってから自分で作って身についてゆくもの。フライパンの高さが自分の目線だった頃から母の料理を追いかけて、お母さんが好きすぎると語る彼女の料理研究は、惜しみなく伝えられながら続いてゆく。

食べることは生きること
あなたの口に入れるものは
あなたを咲かせる糧だから

HAPPY FOOD むっちの食卓
主婦料理研究家むっち。

加藤 睦美 さん
Facebook : mutsumi katou
Instagram : mutsumikatou
ライター
CHIKA
信州在住・佐世保は第二の故郷
ブログ「『お花畑で寝転んで』大げさなくらいでちょうどいい実行委員長CHIKA」
https://ameblo.jp/whenyouwishuponastar0603/entrylist.html mc_chika_love_wedding@yahoo.co.jp
女性は世の中の「花」だから。
月刊「はなはな」が創刊当初から伝えたい想いです。
「はなはな人」を読み終えたあなたが一人の女性としてあなたの場所で咲くエネルギーになったらと願っています。