〜 お寺でレッスン 〜

彼女の説明を受け、海苔の上に酢飯を広げて細巻きを作る。中心に細巻き五本を整えて具材と一緒に太巻きを巻く。指導通りに輪切りにするとピンクのお花が現れた。「できた!」と歓声。「これ、作っておいたの」彼女がニコニコしながら取り出したのは、小誌でお馴染みのキャラクター巻き寿司。「はなちゃん!」「可愛い!」更に興奮の声が響く。

父の想い・長女の選択

佐世保生まれ、三人姉妹の長女。いとこ二人も一緒に生活をして、五人きょうだいの長女のように育った彼女は、幼い頃教師になりたかったという。高校生の時、父から申し訳なさそうに大学へは進学させてやれないと打ち明けられると「勉強嫌いだから大学行かんでもよか」と笑い飛ばした。当時、男性の仕事だったツアーコンダクターに憧れていた彼女は、その憧れに一番近いのはバスガイドだろうと就職した。「なぁんも考えてない」と笑顔で語る彼女の決断が未来に繋がる大きな選択になったと知るのは、後のことだった。

「身ひとつで嫁いでおいで」

会社の寮生活、休みに家に帰ると両親が可愛がってくれる。「ご飯を炊いたことも無かった」と笑う。教育係になり仕事中心に生活していたある日、仏教連合会からの司会の依頼で出かけて行った。会社に司会の依頼があるとバスガイドが派遣されるという。当初予定されていた誰かの代わりだったという彼女は、半年後、その日に見初められた男性からプロポーズを受け、お寺に嫁いだ。「何も考えて無かった。考えていたらこうなっていないよね。」彼女の笑顔と明るい声が心地いい。義母に娘のように可愛がられ、みんなに育ててもらった。分からないことは勉強しよう。凝り性の彼女は料理にも夢中になった。「美幸ちゃん、上手になったねぇ」と言われるようになると嬉しかった。八年後、長男に恵まれる。

デコ弁・デコ寿司

ある日テレビで見た飾り巻き寿司に興味が湧き本を手に入れ、カニ、とんぼ、お花の三種類の巻き寿司を自己流で作る。子どもたちの運動会前にはお母さんたちとお弁当を一緒に作り、彼女の可愛い巻き寿司が喜ばれた。親子クッキングコンテストには参加して三年、息子が小学校六年生の時には九州大会で優勝して全国大会へ出場。何か一つに集中すると他が疎かになり、夫の雷が落ちると笑う彼女。巻き寿司をお寺で教えられるようになったらいいなと考えた。「あのカニを習いたい」との声を受けた頃、福岡で開催されている「飾り巻き寿司技能認定講座」を夫が見つけてくれた。すぐに連絡して通うようになった。

車貯金のゆくえ

講座3級、2級、1級と進み、技能試験が近づくと毎日練習。「もう食べたくない」と家族からの言葉に気持ちが凹んでも近所に配ったり、冷凍保存で凌いだ。当初は喜んでいた息子も、クラスメイトから見せてとお弁当箱が教室を回り手元になかなか戻らず「食べる時間が無くなるから巻き寿司作らないで」と言い出した。それでも、あなたから習いたいと待っていた友人たちは、彼女のインストラクター資格取得に大喜び。レッスンは、すぐ満席になった。試験料、資格更新研修費、福岡や東京への交通費など、経費は毎月夫から預けられていた車貯金から借りていた。「車代のいっちょん貯まらんね」と夫の言葉に「出世払いでよか?」と答える彼女。家のことは彼女に任せていた夫が、洗濯ものを干し、取り込み、たたんでくれる。感謝しながら「夫のサポートに甘えています」と手を合わせる。

手から手へ

一人か二人の個別レッスンから、最大は二十五人程。親子レッスンも楽しい。現在、全国に飾り巻き寿司インストラクターは千人ほど。そのうち活動しているマスターインストラクターは5パーセント、長崎では彼女一人。「あなたの手が生徒の手に移るから、丁寧に教えなさい」と先生の教えを胸に技術と楽しさを伝え続け、彼女の元からインストラクターが生まれた。お花や子どもが喜ぶようなデザイン、季節の柄や日本古来の柄まで、様々なレシピがある。オリジナルを作るようになると、食材を見て「これは巻けそう」と思うようになった。できるだけ手に入りやすい食材を使い試作を繰り返し、完成に辿り着くまでやりなおし。彼女が考案した佐世保の市木「花水木」モチーフは協会公認レシピに選ばれ全国の先生方の手で作られるようになった。

笑顔の伝染

お寺にいらっしゃる檀家さんや生徒さんと一緒に巻き寿司を作り「できた!」と嬉しい顔を送り出す。家で「今日これ作ったの」と会話になる。「お母さん作ったの?」子どもの目が輝く。二人暮らしの女性が夫に巻き寿司を「凄い」と褒められたと弾んだ声を聞く。初めて巻き寿司ができた時の嬉しさを思い出す。愚痴を撒かずに寿司を巻く。広がる笑顔。胸躍る喜び。「笑顔まんまるプロジェクト」は、熊本の子どもたちへの心的支援活動。利用許諾申請をして「くまモン巻き寿司」を考案。現地へ出かけ子どもたちの前でくまモンを巻いて食べてもらうボランティア活動を何度も行う。時には息子と共に高校生たちも参加。佐世保では仲間とコラボレッスンを開催し売り上げを全額寄付。巻き寿司を通じて人と繋がってゆけるのが凄く嬉しくてありがたいと語る彼女。巻き簾を包む両手には、みんなが笑顔で過ごせるようにと彼女の祈りが込められている。

日常生活最高の自分になってみる
小さな達成感を積んだ喜びは
あなたの想像以上に周りを照らす

JSIA 飾り巻き寿司マスターインストラクター
佐藤 美幸 さん
笑顔まんまる飾り巻き寿司教室
TEL:090-4351-9196

facebook:笑顔まんまる飾り巻き寿司教室
blog:https://ryumam.exblog.jp
ライター
CHIKA
信州在住・佐世保は第二の故郷
ブログ「『お花畑で寝転んで』大げさなくらいでちょうどいい実行委員長CHIKA」
https://ameblo.jp/whenyouwishuponastar0603/entrylist.html mc_chika_love_wedding@yahoo.co.jp
女性は世の中の「花」だから。
月刊「はなはな」が創刊当初から伝えたい想いです。
「はなはな人」を読み終えたあなたが一人の女性としてあなたの場所で咲くエネルギーになったらと願っています。