〜 繊細な指先 〜

グラスを持つ手が印象的だった。響きが可愛い「レイポモ」というパン教室の名前の由来を尋ねると、フィンランド語で「パン屋」という意味だと教えてくれた。北欧が好きで、いつか行ってみたいと話す彼女の指先から美味しいものが生まれる。

ご飯がいい

三姉妹の次女として佐世保に生まれた。手先が器用な母は裁縫や洋裁が得意で、時に籐でカゴを編むのを見て育った。幼い頃に母から作ってもらったバターロールの焼き立ての香りと味の記憶が彼女の原点らしい。ところが両親と三姉妹が囲む朝食のテーブルにパンが出てくると嫌だったというから面白い。大人になって自分でパンを焼きはじめるまでは、どちらかというとパンが苦手だったのだという。好んで食べなかったパンを好きになり、いつしかパン教室を開くことになるなんて、予測できない人生が楽しい。

子どもたちの笑顔

結婚して二女一男に恵まれた。ホームベーカリーの電化製品が流行りはじめ、幼い頃に母と生地を練った記憶を頼りに、ふとパンを焼いてみた。子どもたちがオイシイと言って食べる姿に、また作る。笑顔、パンが焼ける香り、焼き立ての美味しさ。改めて実感してパンが好きになった。同時期に、友人がしていた介護の仕事を薦められていた。子育て中の彼女の時間に都合のいいことや将来役に立つこともあり始めてみると、介護の仕事は自分に合っていると感じて好きな仕事になった。作ったパンは友人にお裾分け。食べた友人が美味しいと喜んでくれるのが嬉しかった。焼きあがったパンの写真をSNSに載せると反応があり、友人たち以外からもパン作りを教えて欲しいという声も多く届いた。

転機

パン教室をやったらいいのにと言われても、ずっと社交辞令だと思っていた。好きだった介護の仕事に悩みはじめたタイミングだった。子どもの病気で一週間仕事を休んだ後に葛藤もあり退職したばかり。出来ないことが悔しかった。興味があることには一生懸命で嘘がつけない彼女。ウジウジと悩む自分が嫌だ。区切りを付けたい。決断は自分でしよう。もしダメになっても仕事は何でもある。パン教室をはじめてみよう。どうにも回らなくなったら、いつでも好きな介護の仕事をしたらいい。教室をスタートして間もなく、エステに来るお客様が参加するパン教室の講師をして欲しいと依頼が舞い込んだ。波佐見町まで出張可能かと聞かれて考えた。よし!やろう!「出張できます」返事をした。振り返れば、パン教室一本でやって行こうと決めるきっかけになった出来事だった。

楽しく簡単に

彼女が決断を悩んだ理由は、もう一つあった。結婚生活を解消し子どもたちと一緒に新しい一歩を踏み出したからだった。よそで働くと制約はどうしても出てくる。自分で仕事ができたら。子どもたちとの時間を最優先したい。パン教室をしてみようと決めたら、たくさんの人たちが背中を押してくれた。小学生の娘たちは大丈夫でも幼い息子はどうしよう。すると父が引き受けてくれた。市内の実家を頼れる有難さ。息子と仲良く過ごす父の姿に感謝の想いが湧く。最初はアルバイトをしながら依頼は全て引き受けた。子どもたちが参加するイベントで午前中十人、午後も十人、合計二十人のスケジュールをこなした時は大変だった。いろいろやってみるうちに八人程がちょうどいいのが分かった。子ども教室での年齢制限は無い。大人は写真を撮ってもいいですかと楽しんでいる様子。手が足りない時には大人にも手伝ってもらう。

家で美味しいパンを

出張にオーブンも持ってゆくという彼女。細い腕ながら力はあるらしい。味わい深い噛みしめるパンが好き。写真をみて敷居が高そうと言われるけれど、実はゆっくり教室。大人のパン教室は、おしゃべりを楽しんで欲しい。教室に行くのも忙しいのも苦手だったけど、子どもから離れた自分時間を楽しんで、結果的に家で簡単に美味しいパンを作れちゃった!と喜ばれている。パン種が発酵している間は暇なので、彼女が作る軽食を提供する。作って、食べて、帰る。その日のうちに復習して家のキッチンで簡単に作れた。焼き上がると子どもが美味しいと言って全部食べちゃった。家族が喜ぶから作るのが嬉しい。また作りたい。参加者から嬉しい報告をもらって笑顔になる。

夢発酵も時間をかけて

天然酵母もしたいし、もっと自分を高めてパンの資格も深めたい。ナチュラルフードの資格も取ってパンと料理教室もいいな。いつか店舗を持ってパンを基本にテイクアウトとサイドメニューを作り、オープンの曜日を決め、休みの日には店舗でパン教室。焦らず、ゆっくり叶えたい。今はいいけど、先々はパートナーが居たらいいな。寄り添えて美味しく一緒にお酒を飲める人。これから歳を重ねる両親、海外に暮らす姉と妹も安心できる場所や環境も作りたい。教室を始めて二年が過ぎた。これからも愛情を込めて、家族が嬉しい美味しいパンを作って伝えてゆきたい。初心者が楽しめる家庭で出来るパンを求める人の為に、彼女はその手を動かしている。喜びと共に。

決断して動き始めたら
あなたの背中を押す風が吹く
そこに喜びがあるなら
年齢は関係ないから、大丈夫

Leipomo(レイポモ)
橋本玲子 さん
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ライター
CHIKA
信州在住・佐世保は第二の故郷
ブライダル・イベント・式典MC、ナレーター、ラジオ放送作家
mc_chika_love_wedding@yahoo.co.jp
女性は世の中の「花」だから。
月刊「はなはな」が創刊当初から伝えたい想いです。
「はなはな人」を読み終えたあなたが一人の女性としてあなたの場所で咲くエネルギーになったらと願っています。