作:山野美樹

第十一話 「宇久島の海面の謎」

佐世保市防災危機管理局の豊川拓郎課長は宇久島に向かう為、フェリーなるしおに乗船していた。先日、佐世保市役所に海上保安庁から「五島列島に浮かぶ宇久島の海面が急激に上昇している」との報告が入った。海の水はどんどん上昇し続け、島はいよいよ水没する危険水位に迫っている。豊川は島が水没した場合の避難経路を探る為、宇久島へと派遣された。

豊川は船内でふと、「いったい何時から五島列島の海面は上昇し始めたのだろう?」と記憶を辿る。たしか二週間前、長崎サファリパークの猿が一斉に消えた事件が起った日だった。全国ニュースに取り上げられているのを見て驚いた記憶があるので間違いない。世の中には不思議な事があるものだ。豊川は窓から見えるのどかな海の景色を眺めながら、小さなため息をついた。 しかしこの後、宇久島に到着した彼は更に不思議な光景を目にする事となる。もう既に島の海面は港の数センチ下まで上昇している・・・太陽の光を浴びキラキラと輝いた青い海は、一気に島全体を飲み込もうとしていた。

夕方、佐世保烏帽子岳署で秋山警部補と五反田刑事と合流した西東警部は、この二日間の捜査状況の報告を受けていた。
「その遺留品の中で千年前の猿の毛だけが、うちのデータベースから消されていたんですね」
西東は困惑した表情で、秋山に問いかけた。
「科捜研の西副所長の情報では、捜査に圧力をかけた人物がいる様です」
「そういう事か。それで、圧力をかけた人物は特定できてるんですかね?」
「はい。相当な大物ですよ」
秋山の顔が険しくなる。五反田は秋山の横で顔を引きつらせていた。
「いったい誰なんですか?」
「防衛大臣の大川内睦郎衆議院議員です」
「マジですか。それは、ちょっと相手が悪すぎますよ」
西東は驚きの声を上げた。
「警部、聖文女子学園を調べてみましょう。ここの理事長は、大川内大臣の息子、大川内勇一郎氏ですから」
「そうですね。調べましょう。でも普通に捜査に入ると、僕らにも圧力が掛かりますね」
「では今回は正攻法ではなく、相手の裏をかく作戦で行きましょうかね」
秋山は自信ありげに呟いた。