作:山野美樹

第十三話 「夢で逢いましょう」

 時計の針は深夜二時を指している。二日目の捜査を終えた秋山警部補は、宿泊先のホテルのベッドで深い眠りについていた。秋山は夢の中にいる。場所は森吉祐子が発見された柚木地区の観音菩薩の祠の前。辺りは薄暗く静かな闇が広がっていた。何処からか小さな鈴の音が聞こえてきた。周りを見渡してみたが誰もいない。秋山はふと背中越しに人の気配を感じ、慌てて振り向こうとした。
「動いてはいけません」
人の声がした。男か女か解らない。心地よいソプラノ歌手のような綺麗な甲高い声だ。
「どちら様ですか?」
「私は一年前、この場所で森吉祐子を保護した者です」
「森吉祐子を保護した者?」
秋山は混乱する頭の中を整理しようと、必死に自分の記憶を探る。謎の人物は淡々と秋山の背後から話しかけた。
「この事件は、貴方の力だけでは解決できません」
「僕の力だけでは解決できない?」
「貴方の直感力はとても鋭い。しかしその直感をもってしても、今回の事件は解決できない。森吉祐子の力を借りなさい」
「何故、彼女の力が必要なんですか?」
「だから、私は彼女を保護し守ったのです」
「質問の答えになってませんね」秋山はため息をつく。暗闇の中で、謎の人物は静かに微笑んだ。その瞬間、秋山の脳裏にある事実がひらめく。
「森吉祐子を保護した者?…えっ、もしかしてあなたは!」
秋山は驚いて後ろを振り向く。そして夢は途切れた。

捜査三日目。秋山警部補と西東警部は朝から五反田刑事を連れて、聖文女子学園に向かっていた。
「西東警部、ちょっとご相談があるのですが」
秋山は後部座席に座っていた西東に声をかけた。運転席の五反田はバックミラー越しに西東の顔に視線を送る。西東は携帯電話をいじる手を止め顔を上げた。「確か今日、三村警部と小島警部補が博多出張から戻ってきますよね。あの二人を佐世保に呼んで頂けませんか。森吉祐子の護衛を担当して欲しいんです」
「えっ。彼女、狙われてましたっけ」
「タレコミがあったんですよ」
「マジですか。誰からの情報ですか?」
「観音菩薩様からです。」

秋山は誇らしげに微笑む。西東は鳩が豆鉄砲を食らった様に目を丸くした。