作:山野美樹

第十六話「何か企んでるんでしょ」

 長崎県警本部捜査一課の三村泰久警部と小島吉博警部補は、朝から出張先の福岡市を車で出発し、佐世保市へと向かっていた。
「博多出張から佐世保の現場に直行なんて、珍しいですよね。佐世保の失踪事件で何か進展があったんですか?」
ハンドルを握っていた小島は、不思議そうに上司に語り掛ける。三村は何時もののんびりした口調で部下の問いに答えた。
「いや、さっき西東警部から連絡があってね。ほら、一人だけ無事に発見された女子高生がいたでしょ。あの子の護衛を担当して欲しいってさ。どうやら秋山君からの依頼らしいよ。西東さんも申し訳なさそうな感じだったし」
「どうせ秋卓の思い付きでしょう。相変わらず人使いが荒いなぁ」
「あれ、小島君って秋山君と同期だったっけ?」
「僕の方が一年先輩ですよ。駆け出しの交番勤務の頃、一緒だったんです。彼の無茶ぶりは、あの頃から全然変わってないですもん」
小島は苦笑いを浮かべる。
「まぁ、あれはあれで良いんでしょうけどね。ちゃんと実績残してますから。今回も、どうせ何か企んでるんでしょ。相手の裏をかくって張り切ってるみたいだからさ」
三村は、めんどくさそうに大きな欠伸をした。

「思ったより早かったですね」

西東警部は渋い表情を浮かべながら秋山警部補に話かける。捜査一課の三人は、佐世保烏帽子岳署で昼の休憩を取っていた。聖文女子学園へ向かう途中に刑事課長の杉本から連絡が入り、学園への聞き込み捜査の禁止を言い渡されたのだ。大川内防衛大臣から捜査への圧力がかかるのは解っていたが、秋山も西東も流石にここまで早いタイミングになるとは思ってもいなかった。
「まぁ、これで内通者がはっきり解ったんですから、良しとしましょう」
秋山は澄まし顔で熱い珈琲を口に含んだ。
「ちょっと待って下さい。内通者って誰だったんですか?」
五反田刑事はビックリして右手からドーナツを取りこぼす。新人刑事の慌てぶりに、西東と秋山は声を出して笑い出した。
「西東警部、そろそろこちらからも仕掛けてみましょうかね」
秋山の目つきが変わる。西東は頷くと五反田を指さし指示を出した。
「五反田さん、大島署長を呼んできて下さい」  

この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。