作:山野美樹

第十七話 「消えた女子高生」

午後十四時過ぎ、佐世保烏帽子岳署に南佐世保総合病院から「入院中の森吉祐子が、病室から消えてしまった」との緊急連絡が入った。受付の若い女性職員が慌てて会議室に駆け込んで来る。報告を受けた大島署長は、うろたえながら秋山警部補に詰め寄った。
「秋山警部補、話が違いますよ。ちゃんと彼女には護衛を付けたと仰ったじゃないですか」
「もちろんその通りです。捜査一課の刑事二名がちゃんと彼女に張り付いていた筈です」
秋山は怪訝そうに質問に答える。西東警部と五反田刑事は、静かに二人のやり取りを見守っていた。
「では、なぜ彼女は姿を消してしまったんですか?」
大島は焦ったように声を荒げる。秋山は大島を落ち着かせるように、ゆっくりとした口調で語りかけた。
「彼女の護衛に付いていた二人は、とても優秀な刑事達です。僕にも何が起こったのかさっぱり解りません」
肩を落とす大島の姿を横目に、秋山は携帯電話を取り出す。五反田は受付の若い女性職員を連れて会議室の外に出た。
「三村警部の携帯電話は圏外ですね。連絡が取れません」
秋山の言葉に、大島は天を仰いだ。

夕方、三村警部と小島警部補は五島列島に浮かぶ宇久島にいた。博多出張からそのまま昼には佐世保に移動し、夕方には森吉祐子を護衛しながらフェリーで宇久島へ。あまりにハードな日程に、タフガイが売りの三村警部にも少し疲れの表情がみられた。
「マジで秋卓を恨みますよ」
小島は顰め顔で煙草に火をつける。
「まぁこれも仕事ですからね、仕方ないですよ」
三村は部下をなだめる様にぼやきながら、港から海を眺めている森吉祐子の後姿に視線を移した。祐子の視界には、夕日に照らされオレンジ色に輝いた海の景色が映し出されている。海は今にも宇久島を飲み込もうとするかの様に、海面を有り得ない程上昇させていた。
「三村警部、本当に大丈夫なんですか?あの子を黙ってこんな所まで連れてきて・・・。病院も捜査本部も今ごろ大混乱でしょう」
「あの子を病院から無事に逃がす為に、僕らは呼ばれたんでしょ。後は秋山君に大暴れして貰って、責任を取ってもらいましょう」
三村は楽しそうに微笑んだ。