作:山野美樹

第四話 「聖文女子学園のひみつ」

佐世保市にある聖文女子学園は、戦後すぐに開校した由緒正しい高校で、烏帽子岳の登り口がある山手町の高台に位置する。失踪事件の唯一の生還者、森吉祐子の意識が戻ったとの連絡を受けた学校は、喜びで満ち溢れていた。そんな中、理事長室には大川内勇一郎理事長、小田校長、そして失踪した生徒達の学年主任で担任だった柚原慶子の三人が集まっていた。
「森吉君の意識が戻ったらしいね」
出張から戻ったばかりの大川内は、嬉しい報告を受けて喜びの表情を見せた。
「これで後二人の生徒達の消息も、何か解るかもしれませんよ」
校長も安堵の表情を浮かべる。柚原慶子はそんな二人の笑顔に水をさすように、静かな口調で話しかけた。
「警察が来るそうです」
「警察?もう警察には一年前にすべて話しただろう」
大川内は太く凛々しい眉を吊り上げた。
「今回は、長崎県警本部捜査一課の刑事が派遣されたみたいですよ」
「捜査一課のエリート刑事か」
大川内は大きなため息をついた。校長が職員室に戻ると、大川内は突然何かを思い出した様に慶子に問いかけた。
「柚原先生、あまりペラペラと警察に話してはいけませんよ」
「まぁ、私が警察に何を話すというのですか?」
「いや、関係のない事を喋りすぎて、色々と勘繰られても困るのでね」
「関係のない事・・・例えばお猿さんの事とか?」
慶子は悪戯っぽく微笑む。大川内は少し慌てた様に席を立った。
「そういう事は、冗談でも言うもんじゃありません」
睨み付けながら大川内は声を荒げる。慶子はにっこり微笑むと、理事長室をあとにした。

森吉祐子との初面談を終え病室を出た秋山警部補と五反田刑事は、足早に駐車場に向かう。次の訪問先は祐子の高校、聖文女子学園だ。五反田は心配そうに秋山に話しかけた。
「この事件、解決しますかね?」
「解決するよ」
「えっ。嫌な予感がするって、さっき言ってたじゃないですか」
「五反田ちゃん、この事件はね。皆、行方不明って事柄にばかり気を取られてしまって事件の本質を見失ってるんだ。物事には必ず因果関係がある。多分、そこに解決のヒントが隠されている」