作:山野美樹

第五話「調べ物には福来る」

五反田刑事はアルバカーキ橋を横目に次の目的地、聖文女子学園に向かって車を走らせる。助手席の秋山警部補は携帯電話を取り出すと、長崎県警本部に連絡を取った。五反田は、秋山の会話に興味津々に聞き耳を立てていた。
「杉本課長、烏帽子岳署で確認した遺留品の中に、気になる物があるんです。もう一度調べ直して欲しいのですが…。そうです。あっ、いや、うちの鑑識班ではなく科捜研の西副所長に依頼して下さい」
秋山は上司と話し終えると、運転席の五反田に視線を送る。五反田は秋山の科捜研という言葉に目を輝かせていた。
「秋山さん、あの科捜研が出て来るんですか?」
「うん、出て来る。あれを完璧に調べられるのは、科捜研の西喜一郎先輩しかいないだろうからね」

聖文女子学園では、大川内理事長が秋山と五反田を手厚く出迎えてくれた。この四十代後半の男性は、教育者というよりは、会社の経営者の様な雰囲気の持ち主だった。現場にタッチしていないので、失踪した三人の生徒達との接点は無かった。大川内との挨拶の後、秋山は失踪した生徒、塩田はるか、大林涼子、そして意識を取り戻した森吉祐子の担任だった柚原慶子と面談した。慶子は三十五歳とはとても思えない程の美しい容姿で、白い肌に潤んだ大きな瞳がとても印象的だった。
「長崎県警本部捜査一課の秋山です」
秋山はニッコリ微笑みながら名刺を取り出す。
「二年生の学年主任の柚原です」
慶子は名刺交換を済ませると、大きな瞳でじっと秋山を見つめていた。
「柚原先生、一年前の失踪事件前後に、何か気になる出来事はありませんでしたか?」
「特に何も…」
「では、質問を変えてみましょう。三人の生徒に何か共通する事は有りますか?」
秋山は穏やかな口調で質問を変えた。
「前にも警察の方にはお話しましたが、塩田さんと大林さんは毎日放課後に、図書館へ通って調べ物をしていました」
「二人が調べ物を?いったい何を調べていたんですか?」
秋山は慶子の潤んだ瞳を見据える。五反田は目を大きく見開いたまま、ピクリとも動かなくなった。