作:山野美樹

第九話 「長崎サファリパークの怪」

長崎県警本部捜査一課の西東翔太郎警部は、今日も西海市の動物園、長崎サファリパークの園内を歩き回っていた。二週間前に突然消えてしまった猿の集団誘拐事件を追っていたが、今のところ全く手掛かりはない。それどころか、二日前に相棒の秋山警部補が佐世保市で一年前に起こった女子生徒失踪事件の再捜査に引っ張り出されてしまい、一人での捜査を強いられていた。
こういう摩訶不思議な事件は、自分の様な理論的に捜査を進めていくタイプより、秋山の様な直感の優れたタイプの刑事の方が向いている。
西東は途方に暮れながらも、何とか手がかりを掴もうと、毎日園内の聞き込み捜査を進めていた。先程、その秋山警部補から突然連絡があった。
「長崎サファリパークから猿が消えてしまったあと、園内の何処かに特殊な獣の毛が落ちてなかったか調べて欲しい」
との事だった。どうやら科捜研の西副所長も絡んでいるようだが、特殊な獣の毛がこの事件にどう関係があるのかよく解らない。
しかし捜査は完全に手詰まり状態だったので、取りあえず秋山の提案に乗ってみる事にした。秋山警部補の直感は、不思議といつも当たるのだ。

西東警部は長崎サファリパークの園長に相談して、特殊な獣の毛を見たものがいないか、聞き込みを始めた。園長から
「それなら、清掃係に確認を取った方が良い」
と勧められ、主に猿が消えた場所の清掃を担当している七十過ぎの男性職員を紹介された。
「猿が消えてしまった日、何処かで特殊な獣の毛を見ませんでしたか?」
「あぁ、見ましたよ。とても不思議な毛の塊が、溝の所にいっぱい落ちてました」
「えっ、マジですか?。どんな毛でした?」
西東は驚きながら、警察手帳を取り出しメモをとる。男性職員は刑事が自分の話に興味を示したことが嬉しかったのか、上機嫌に説明を始めた。
「あんな毛は初めて見ました。針金のように固いのに滑らかな弾力性があり、色は焦げ茶色なのに光に当たると黄金に輝く。あれは絶対ここの動物のものではないですよ。記念に採ってありますが見ますか?」
「もちろん、拝見させて下さい」西東警部は心の中で、ビンゴと囁いた。