やまのみき 作

第十二話 「お別れ」

 鹿賀家の墓でお参りを済ませた鹿賀とたかみは、墓地の敷地内を奥の方へと歩いていく。たかみの先祖たちが眠っている三原家の墓の前で、二人は立ち止まった。先ほどまで騒がしく鳴いていた虫の鳴き声がぴたりと止まる。たかみは、一礼すると静かに手を合わせた。突然、上空から鳥の鳴き声が聞こえた。鹿賀は、その鳴き声につられて空を見上げる。上空に一匹の大きな鷹が、気持ちよさそうに飛び回っている。鹿賀は何かを悟ったように、たかみに声をかけた。
「たかみちゃん、もう帰った方がいい」
「えっ」
たかみは不思議そうに鹿賀の方へ視線を向けた。
「君が背負ってるものは全部僕が引き受けるから、だからもう帰った方がいい」
「鹿賀先輩、突然どうしたんですか?私、何も背負ってなんかいませんよ」
たかみは、自分の背中を確認するように振り返る。鹿賀は悲しそうな目をしながら、たかみの顔を見つめた。「ずっと、墓参りに来てなかったもんね。ここのところ仕事が忙しくてさ。なかなか、ここまで足を運べなかったんだ」
「えっ、いや、だから・・・。鹿賀先輩、何言ってるんですか」
たかみは悲しそうな目で、鹿賀を見つめ返す。たかみの後ろに、黒いコウモリ傘をさした老婦人が立っていた。
「君が霊的なものが見えるようになったのには、ちゃんとした理由がある。喫茶店のママは君を無視したんではない。君に気づかなかったんだ。そして君が帰る場所は一つしかない」
「ちゃんとした理由?帰る場所?」
「もう、君もうすうす気が付いているはずだ。理由はただ一つ。だって、君は死んでるんだから」
鹿賀は寂しそうにつぶやく。たかみの目にどんどん涙がたまっていく。
「そんな・・・」
「君はたった一人の親族だったお祖母さんを亡くしてから、誰にも頼らず、ずっと一人で頑張って生きてきた。だから、その君の思いは、これから僕が背負って生きていく」
「なにを言ってるの?私が死んでいる?」
目を丸くして驚くたかみを、鹿賀はそっと抱きしめる。その瞬間、たかみの目から、大粒の涙が零れ落ちた。上空を飛び回っていた鷹が大きな鳴き声を上げ天に向かって飛び立っていく。黒いコウモリ傘をさした老婆の姿が消える。そして、たかみの姿も消えてしまった。

この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。