やまのみき 作

第三話 「洋館の秘密」

 たかみの住む洋館の室内は、外観から想像していたよりも、思いのほか広く感じられた。その理由は、日本家屋と比べ、明らかに高く作られた天井のせいだろう。鹿賀は玄関で靴を脱ぐと、廊下に上がって左にある居間に通された。その部屋は、20畳はある広いリビングで、高そうな家具や、割ってしまうと泣くまで怒られそうなマイセン焼の花瓶などが、品良く飾られている。天井には豪華なシャンデリアが吊るされていて、古い油絵が金色の額縁と共に壁に掛けられていた。窓の外には佐世保市内を見下ろす街の風景と、青い海が見える。年季の入った英国のアンティークソファーに腰かけた鹿賀は、紅茶を飲みながらたかみの相談話に耳を傾けた。
「鹿賀先輩、私、この家に住み始めてから、目がおかしくなっちゃったんですよ」
「目がおかしくなった?老眼になったとか?」
「なに言ってんですか!老眼になんか、なってません。私、まだ27歳ですよ」
たかみは呆れたようにため息を吐く。鹿賀は面白そうに、おどけてみせた。
「あのですね、最近、見えるようになっちゃったんですよ」
「なにが?」
「人には見えない、ある者が」
「人に見えない者が、見えるようになった?それって、もしかして・・・」
鹿賀が顔をしかめる。
「そうなんです。幽霊が見えるようになったんですよ」
「ふーん。そういう事か。それは、大変だね」
鹿賀は、面倒くさそうにティーカップに手を伸ばす。
「やっぱり。鹿賀先輩は信じてくれますよね。だから、先輩に相談しようと思ったんですよ」
たかみは、安堵の表情を浮かべた。

 「鹿賀先輩は、昔から幽霊が見えるんですよね?」
「僕は子供の頃から普通に見えてたよ」
「気持ち悪くないですか?」
「そんなの、もう慣れてしまったよ。それより、たかみちゃんは具体的に何時からそんな厄介なことになってしまったの?」
鹿賀は不思議そうに、たかみに問いかける。たかみは、一瞬戸惑う表情を見せたが、内緒話をするように小声で話し出した。
「それが、つい最近のことなんですが、寝室で驚くような出来事に遭遇したんです」
「驚くような事?」
「そうです。その日以来、死んだ人の姿が見えるようになっちゃったんですよ」

 

この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。