やまのみき 作

第五話 「美しき侵入者」

 「寝室に鷹が侵入してきた次の日から、幽霊が見えるようになったんだね」
鹿賀は、ソファーに腰掛けながら、紅茶を口に運ぶ。たかみは興奮した様子で問いに答えた。
「そうなんです。でも、もう一つ不思議なのは、ベッドで気を失って、朝目が覚めたら、床に散らかっていたはずの鷹の羽が綺麗に消えてしまってたんですよ。寝室の窓もきっちり鍵が掛かってました。いったい、あの鷹は何だったんでしょう?」
「そんなの、僕にも分からないよ。ただ言えるのはね、その鷹に連れ去られてたら、多分、たかみちゃんにはもう会えなかったような気がする」
鹿賀はティーカップをテーブルに戻しながら、ちらっと窓の外に目を向ける。たかみは大きく頷いた。
「やっぱり、鹿賀先輩もそう思いますか?実は私も、すごく嫌な予感がしたんですよ」
 「寝室に鷹が侵入してきた次の日から、幽霊が見えるようになったんだね」
鹿賀は、ソファーに腰掛けながら、紅茶を口に運ぶ。たかみは興奮した様子で問いに答えた。
「そうなんです。でも、もう一つ不思議なのは、ベッドで気を失って、朝目が覚めたら、床に散らかっていたはずの鷹の羽が綺麗に消えてしまってたんですよ。寝室の窓もきっちり鍵が掛かってました。いったい、あの鷹は何だったんでしょう?」
「そんなの、僕にも分からないよ。ただ言えるのはね、その鷹に連れ去られてたら、多分、たかみちゃんにはもう会えなかったような気がする」
鹿賀はティーカップをテーブルに戻しながら、ちらっと窓の外に目を向ける。たかみは大きく頷いた。
「やっぱり、鹿賀先輩もそう思いますか?実は私も、すごく嫌な予感がしたんですよ」

相談話を聞き終えた鹿賀は、たかみを散歩に誘った。たかみは嬉しそうに頷くと、服を着替えてくると言い、席を立つ。その間、鹿賀は、古い洋館の庭先で彼女を待つことにした。庭には誰もいない。折橋町から見える空は、雲一つなく澄みきっていた。
鹿賀は庭の奥に目を向ける。ため息をつきながら、独り言のように呟いた。
「郁美さん、いるんでしょう。隠れてないで、さっさと出てきて下さいよ」庭の物陰から、目鼻立ちのはっきりした、美しい女性が現れる。女性は妖艶な笑みを浮かべながら鹿賀に話しかけた。
「気が付いてたの?」
「窓越しに部屋を覗いてたでしょう。他人の庭に勝手に入りこんで、何やってるんですか」
「ほんとに分かってないなぁ。貴方を心配してるから覗いてたんでしょう」郁美は、怒ったように頬を膨らませる。鹿賀は苦笑いを浮かべながら、その魅力的な大きな目を見つめていた。
「郁美さん、僕にもプライバシーってものがあるんですよ」
「あら、鹿賀君、私のこと好きなんでしょう。だったら、別にかまわないじゃない」
「違います。好きだった、です」
鹿賀は間髪入れずに即答する。郁美は怒ったように頬を膨らませた。
「そんな事は、どうでも良いの。それよりさっきの鷹の話、気にならない?私、その鷹の正体知ってるけど」

この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。