やまのみき 作

第8話 「レモネードとカルコーク」

 「月曜日にお休みとか貰えるんだ?」
カフェ・ハッチのママは、笑みを浮かべながら鹿賀に話しかける。鹿賀はメニューブックを手に取りながら、ママの問いに答えた。
「先週の日曜日に休日出勤したんで、その代休を貰ったんですよ」
「そうだったんだ。それで、今日は何にする?」
「あっ、ちょっと待って下さいね。取りあえず、お冷を二つ下さい」
鹿賀は慌ててメニューを確認する。ママがカウンターから出てきて、二人の座るテーブルにお冷を置いた。
「ちょっと、これ、どういう事ですか」たかみが、ムッとした表情を浮かべる。テーブルには、鹿賀の目の前にだけお冷のコップが二つ並べられていた。
「やっぱり、ここのママ、私のこと無視してるんですよ。なんで、私にお冷出さないんですか?」
「いや、それは・・・」
「いやじゃないです。こないだ一人で来た時なんか、いらっしゃいませの言葉もなく、完全に無視だったんですよ。ありえないでしょう。だから、すぐにお店出たんです」
たかみは顔を真っ赤にしながら、周りに聞こえないように小声で鹿賀に訴える。鹿賀は困ったように顔をしかめた。
「分かった、分かった。取りあえず落ち着こう。で、なに飲むの?」
「私、レモネードにします」
たかみはムッとした表情のまま、問いに答える。鹿賀はカウンターで作業をしていたママに声をかけた。
「レモネードとカルコークをお願いします」

「えっ、カルコークも飲むの?」
カウンターからママが不思議そうに聞き返す。たかみも思わず鹿賀に問いかけた。
「カルコークって何ですか?」
「あれ、知らないの。カルコークって、コーラのカルピス割りのことだよ」
「へ〜。カルピスの原液を、コーラに混ぜるんですか?そんな飲み物あるんだ」
たかみは納得したようにうなずいた。店内に設置されているスピーカーから、洋楽の古いジャズが流れている。二人は、マイルス・デイヴィスの「So What」の心地よい音色に耳を傾けながら、オーダーした品を待っていた。たかみは、カルコークという、生まれて初めて見る飲み物に、興味津々となっている。なぜ、鹿賀がカルコークを注文したのか、その意味も分からずに・・・。

この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。