やまのみき 作

第9話 「月曜日の墓参り」

 カフェ・ハッチを出た鹿賀とたかみは、四ヶ町アーケードを歩きながら、京町方面へと歩いていく。月曜日の午後という時間帯のわりに、アーケードの人通りは多かった。二人の視界の先にアーケードの入り口にある青い看板のコンビニが入ってくる。鹿賀は、何かを思い出したようにたかみに声をかけた。
「そういえば、お墓参りに行ってないな」
「お墓参り?」
「そう、お墓参り。仕事が忙しすぎて、まだ今年は亡くなった母のお墓にお参りできてないんだ」
「それなら、今から一緒に行きましょう。鹿賀先輩家のお墓も、三浦町でしたよね」
「たかみちゃん、付き合ってくれるの?」
鹿賀は嬉しそうに問いかける。たかみは、微笑みながら頷いた。
「はい、私もお墓参りしたいですから」

 二人は国道204号線にかかった歩道橋をわたり、戸尾市場に隣接するトンネル横丁を通りながら三浦町方面へと向かう。トンネル横丁に昔からある魚屋さんの前に、目を引くような美しい女性が一人で立っていた。その女性は、たかみの自宅のリビングを庭先から覗いていた郁美だった。郁美はにこやかに微笑みながら、加賀に向かって手を振っている。鹿賀は一瞬目を丸くすると、気が付かないふりをしながら店の前を通り過ぎて行った。
「鹿賀先輩、今の女性って・・・」
「うん、そうだね。関わらない方がいい」鹿賀は、たかみの問いかけに少しだけ語尾を強めながら答えると、トンネル横丁を早足で駆け抜けていく。コインパーキングを右手に十字路を左に曲がると、歩く速度を元に戻した。
鹿賀家の先祖の墓も、たかみの先祖が眠るお墓も、同じ墓地の敷地内にある。鹿賀家の墓には、鹿賀の亡くなった母親が眠っていた。
「今年のお盆休みは、お参りが出来なかったからね。母に怒られるところだった。墓参りなんて、年に一度しかしないから、丁度よい機会が出来たよ。」
鹿賀は嬉しそうに微笑むと、路地にある石段を登り始める。たかみは石段を登りながら、鹿賀に話かけた。
「鹿賀先輩、亡くなったお母さんが夢に出て来たことってありますか?」
「あるよ、まだ母が亡くなって間もない頃だった」
鹿賀は、少し寂しそうに話しだした。

 

この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。